| 講習会は週1回、もう一人のボランティアとの交代制で、隔週でお手伝いをしています。佐藤さんの隣りに座り、2時間の講義中、講師や他の生徒が言ったことをできるだけすべてパソコンに入力します。たとえ入力が得意とは言えスピードについていくのは大変ですし、要約が必要な長い文章になると内容を理解していることが大前提になります。それでも隣りで「うん、うん」と頷く佐藤さんを見ていると、疲れを感じることなく集中することができます。私の「パソコン通訳」は決して完璧なものではありませんが、できるだけ大切な情報を、そしてできるだけ多くの情報を伝えられるようにと頑張っています。 |
実際に要約筆記を体験して気づいたことは多く、例えば自分だけだったら普通はノートにとらないことが、佐藤さんには必要だということもその1つです。「テキストの何ページを開いて」とか「2人ペアになって」という指示があったとき、また先生の冗談で教室が沸いたときなども、できるだけ早く文字にして伝えなければいけません。とにかく、自分が楽しむことではなく佐藤さんが楽しむことを第一に考えることが、要約筆記者の役目なのだと思います。 |
| 最近受けた授業は「コミュニケーションについて」。「会話をするときの自分の特徴を知る」というもので、話し手・聴き手・観察者に分かれてのグループワークもありました。「話し手の声の大きさ」などの特徴は分からない佐藤さんですが、表情の観察力は人一倍でしたし、聞こえなくても佐藤さんに伝わっていることというのは私の想像以上なのかもしれません。また話し手役の時は「10年後の自分」という与えられたテーマに対して、「ろう者のための心理カウンセラーになりたい」という夢を、筆談を交えて話してくれ、その想いは私を含めた聴き手に十分伝わるものでした。 |
パソコン通訳は、場所もスピードも限られ、更に「パソコンの画面を見る」という行為が視線を話し手からそらさせてしまうことがあるため、コミュニケーションとして不利な点もあります。しかしこの方法によって多くの方に学ぶ機会を与えることができるのも事実です。佐藤さんとの講習会は、これからも約半年続きます。パソコン要約筆記の腕を磨くだけでなく、より表現豊かな手話の勉強にも力を入れて、もっと佐藤さんの役に立てるようになること、そしてこの「要約筆記の大切さ」というものを多くの人に伝えていくこと、これが私の今の目標です。 |