「要約筆記ボランティア」を始めて3ヶ月。きっかけは『ボラみみ』3月号で見つけた「心理カウンセラー講習会の要約筆記ボランティア募集」の記事でした。聴覚に障害をもつある男性が、「講習会に参加してカウンセリングの勉強がしたい」ということで、一緒に講義に出てその内容をパソコンに入力する人を探していたのです。私は入力が好きでしたし、ちょうど手話の勉強を始めた頃だったのですぐに興味をもち、聴覚の障害をもつ人と交流して何かを感じてみたいという思いもあって、このボランティアに応募しました。
 講習会に先駆けてその男性(佐藤さん)にお会いしたのは3月下旬。私にとって、聴覚に障害をもつ方と接する初めての機会でした。手話もほとんどできない私がちゃんと交流できるのかという不安はすぐに吹き飛び、「こんにちは。はじめまして。牧です。よろしくお願いします。」と初めて手話で会話したことがとても嬉しかったです。その日は筆談を交えて、聴覚障害者を取り巻く諸問題に対する佐藤さんの思いなどを聞くことができ、講習会などに参加して学びたいという気持ちはみんな同じであることを私に気づかせてくれました。そんな佐藤さんの気持ちに答えるため、要約筆記の務めをしっかり果たそうと決意しました。

 講習会は週1回、もう一人のボランティアとの交代制で、隔週でお手伝いをしています。佐藤さんの隣りに座り、2時間の講義中、講師や他の生徒が言ったことをできるだけすべてパソコンに入力します。たとえ入力が得意とは言えスピードについていくのは大変ですし、要約が必要な長い文章になると内容を理解していることが大前提になります。それでも隣りで「うん、うん」と頷く佐藤さんを見ていると、疲れを感じることなく集中することができます。私の「パソコン通訳」は決して完璧なものではありませんが、できるだけ大切な情報を、そしてできるだけ多くの情報を伝えられるようにと頑張っています。
 実際に要約筆記を体験して気づいたことは多く、例えば自分だけだったら普通はノートにとらないことが、佐藤さんには必要だということもその1つです。「テキストの何ページを開いて」とか「2人ペアになって」という指示があったとき、また先生の冗談で教室が沸いたときなども、できるだけ早く文字にして伝えなければいけません。とにかく、自分が楽しむことではなく佐藤さんが楽しむことを第一に考えることが、要約筆記者の役目なのだと思います。
 最近受けた授業は「コミュニケーションについて」。「会話をするときの自分の特徴を知る」というもので、話し手・聴き手・観察者に分かれてのグループワークもありました。「話し手の声の大きさ」などの特徴は分からない佐藤さんですが、表情の観察力は人一倍でしたし、聞こえなくても佐藤さんに伝わっていることというのは私の想像以上なのかもしれません。また話し手役の時は「10年後の自分」という与えられたテーマに対して、「ろう者のための心理カウンセラーになりたい」という夢を、筆談を交えて話してくれ、その想いは私を含めた聴き手に十分伝わるものでした。
 パソコン通訳は、場所もスピードも限られ、更に「パソコンの画面を見る」という行為が視線を話し手からそらさせてしまうことがあるため、コミュニケーションとして不利な点もあります。しかしこの方法によって多くの方に学ぶ機会を与えることができるのも事実です。佐藤さんとの講習会は、これからも約半年続きます。パソコン要約筆記の腕を磨くだけでなく、より表現豊かな手話の勉強にも力を入れて、もっと佐藤さんの役に立てるようになること、そしてこの「要約筆記の大切さ」というものを多くの人に伝えていくこと、これが私の今の目標です。



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boramimi 2002/08