サンフランシスコ レポート
第2回 企業と対等につきあうNPO

ボラみみより情報局 事務局長

園部吉規

2002年9月

私は、この2月、3月にインターンとして、アメリカのNPOで働く経験をしました。私が見てきたサンフランシスコのNPOを紹介します。
先回(6月号)では、シニアネット(SeniorNet)がフランチャイズ制度を利用して全米に240ものパソコン教室を展開し、3万人もの会員を抱える巨大なNPOで驚いたことを書きました。もうひとつ、シニアネットに驚かされたことがありました。支援を受ける企業と対等、もしくは、企業よりも優位に交渉をしていたのです。
シニアネットではパソコンが安く購入することができることも紹介しましたが、これはシニアネットがコンピュータ・メーカであるA社から強力なサポートを受けているからです。A社は、金銭でのサポートはしていませんでしたが、シニアネットの教室や会員に自社のパソコンを安く提供することでシニアネットを支援していました。両社の関係は、シニアネットの黎明期である80年代後半から10年以上にも及びます。その関係はお互いにメリットを出し合い、蜜月のものに見えました。写真1にもかかわらず、シニアネットは他社にサポートを求めていました。しかもA社のライバル会社であるB社に対してです。私がシニアネットで働いているとき、資金調達担当者が初めてB社に接触するところでした。私は、運よくそのファースト・コンタクトに立ち合わせてもらいました。働きかけはシニアネットからでしたが、B社もシニアネットの活動にとても興味を示し、今後、必要としている支援内容について詰めていき、契約をしようと積極的な姿勢を見せていました。
シニアネットの資金調達担当者に「A社は他社に支援を求めていくことを知っているのか、A社は契約を解消し支援を中止しようとするのではないか」と尋ねたところ、彼女は自信をもって答えました。「A社との契約内容に一社独占という条項はありません。だから、他社に声をかけることは何ら問題になりません。B社のパソコンの方がA社より安いし、シニアネットの会員はそれをさらに安く買えるようになるのです。A社はその事実を知るべきで、シニアネットにおけるシェアを抑えたいのなら、さらによりよいサービスを提供すべきなのです。それができないのなら、私たちは他社との関係を深くしていくだけです。それが会員の利益になるのですから」。

NPOが企業を競争させている。これは、驚きでした。シニアネットほどの巨大なNPOになると、企業も存在や影響力、売上を無視できないのでしょう。むしろサポートをしたほうが、企業にとってメリットがあるのかもしれません。シニアネットは規模を活かして企業と交渉しているのです。
写真2日本にいるときは、NPOは脆弱で、政府や企業の支援を受けないと、継続できない組織だというイメージがありました。ところが、シニアネットで、そのイメージは払拭されました。必ずしも支援を受ける側が、弱い立場にあるとは限らないのだと気がつきました。
シニアネットほどの巨大なNPOでも企業の支援を受けているわけですが、それは、組織を維持するためではなく、受益者のメリットのためなのです。日本でのNPOは、まだ一般の人に理解されていないという環境の悪い中で、いかに活動を継続していくか、そのために助成金をいくつ獲得しなければならないということばかりに偏りがちですが、むしろNPOだからできること、NPOにしかできないことをしっかりと見据えていくべきなのでしょう。
シニアネットは、私にNPOにとって大切なものを思い出させてくれたと同時に、NPOの可能性が無限であることも教えてくれました。
写真1 資金調達担当のステイシー。「企業がシニアネットによりよいサービスを提供してくれればよいのです」。
写真2 CEO(最高責任者)のアン(左)。コンピュータ産業界に最も影響を与える100人にも選ばれたことがある。その一方で日本からの訪問者(右)に気軽に対応していた。

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