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東北を襲った未曾有の大災害3・11から間もなく2年が経とうとしています。今もたくさんの団体が支援活動をしていますが、その中でも特に多彩な活動を続けているのが「東日本大震災復興支援団体 愛チカラ」です。

●●● 愛チカラは学生のチカラ  ●●●

 愛チカラでは、愛知県内の25大学から集まった学生と社会人が、被災された方々と“共に生きる”ことを大切にし、被災地の声に寄り添った支援を行っています。支援内容は、保養キャンプ、ボランティアバス、チャリティイベント、被災地の状況を伝える出前授業、安全な野菜を福島に送る活動など、多岐にわたります。
 学生ボランティアは、やりたいと思ったことは自分たちでどんどん実行しています。イベントの企画はもちろん、活動に必要な助成金の申請書も書きます。そんなやる気のある学生を支えるのが社会人サポーターです。社会経験が豊富なスタッフがいるからこそ、学生が安心してのびのびと活動できるのです。

福島の今を伝えるイベント

福島の今を伝えるイベント

●●● 共に生きるという想い  ●●●

 愛チカラが大事にしているのは、「顔の見える支援」です。その理念は「we are family」という合言葉に表現されています。家族のように支え合うことはもちろん、家族だからこそ心の内をさらけ出すことが出来る、そんな関係を築いています。保養キャンプで子どもたちと本気でぶつかり合う日々が信頼関係を生み、閉ざしていた心の声を拾うことが出来たきっかけになりました。“あなたは一人じゃない、私たちは共に生きていく”そんな想いが込められた合言葉が「we are family」です。 

保養最終日の記念写真 「We are family!」

保養最終日の記念写真 「We are family!」

●●● 子どもだけで過ごす保養 ●●●

 現在、愛チカラの活動の中でも特に大きな部分を占めているのが保養活動です。福島に住んでいる子育て中の親ならば、誰しもが放射能の影響から子どもを守りたいと思っているでしょう。そういった要望に応えるべく、放射能の心配のない全国各地で様々な団体が保養受け入れをしています。実施時期は学校の春休み、夏休み、冬休みに合わせて、期間は2〜3日程度の短いものから1カ月近くになるものまで様々です。内容は社会見学、テーマパークでの遊び、野外活動など、受け入れ団体の得意分野を活かしてプログラムが組まれることが多いようです。
 愛チカラの保養活動の特色は、被災者の“今”の声に対応すること。過去4回にわたり受け入れ態勢も変化しているそうです。震災後初の保養キャンプでは、一刻も早く子どもたちの安全を確保するために、子どもだけの受け入れに踏み切りました。そして共に生活する中で、子どもたちの話から、保護者の方たちが抱えているストレスの現状が分かりました。それにより、2回目以降からは保護者の方も参加する形をとり、今回のウィンターキャンプでは、学生・社会人スタッフと並んで運営側に回るなど、子どもたちの生活を支えました。将来的には被災地の自立を考え、福島の保護者の方々が自らの子どもたちを守るために立ち上がり、この保養キャンプを運営していくことを理想としています。

「おかわり!」の声が飛び交うごはんタイム

「おかわり!」の声が飛び交うごはんタイム

 保養活動の準備には数カ月も前から何回もミーティングをします。安心して食べてもらえる食事、子どもたちに自然を感じてもらえる体験、移動手段、スタッフの手配など、準備することはたくさんあります。子どもだけでもおよそ70人以上も受け入れるだけでなく、約2週間という長い日程の中では、ありとあらゆる事態を想定しておかなければなりません。直前の準備は本当に大変ですが、「子どもたちを笑顔にすることが嬉しく、楽しいからこそ続けられるボランティアです」と学生代表の矢野さんは言います。様々な大学から集まるメンバーや学生を本気で応援してくれる社会人サポーターとの交流も愛チカラの大きな魅力です。

水面に子どもたちの歓声が響きます

水面に子どもたちの歓声が響きます

●●● 今も戻らない「当たり前」 ●●●

 保養活動中の子どもたちの言葉や表情からは、福島での自由のない生活が垣間見えます。ある女の子は「このお花触っていいの?」とおそるおそるスタッフに聞いてきます。また別の子は、外で遊び回ってひじやひざをすりむいてしまったとき、「久しぶりにこんなケガした!」と嬉しそうに話します。室内でしか許されない遊び、常に産地を気にしながらの食事。そんなストレスから解放された保養中の子どもたちは、みんなのびのびと遊んで、ごはんもおなかいっぱい食べて、そして疲れてぐっすりと眠ります。
 しかし、それができるのは保養期間中だけのこと。彼らが福島に戻れば、また不自由な毎日が待っています。当たり前の日常が福島では今も失われているという現実は、日本社会に突きつけられた大きな課題でもあるのです。

何も気にすることなく野山を駆けろ!

何も気にすることなく野山を駆けろ!

●●● 未来への決意、そして希望へ  ●●●

 外で遊べないこと、放射能の影響、差別や偏見への不安、見えない未来…。私たちには想像もつかないストレスを抱えている福島の子どもたちですが、保養を通じて彼らは確実に変わってきているようです。自分たちの置かれた状況を理解しようと必死にもがき、時には子どもたちだけで話し合いをしたこともあります。そのそばには、いつも信頼できる愛チカラのスタッフがいたのです。自分の気持ちを受け止めてくれる大人の存在が彼らの大きな支えになりました。「勇気を持って未来へと歩む」という子どもたちの決意は、学生たちにとってもかけがえのない宝物です。
 子どもたちとの交流の中で気付いたものを胸に歩んでいく学生たち。大人として、次世代へ残す未来を考えていくこと。それがこれからの社会の希望へとつながっていくのです。


ボランティアバスで仮設住宅を訪問  愛チカラのメンバー

ボランティアバスで仮設住宅を訪問/愛チカラのメンバー

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