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●捨て犬、保護された犬たちの現状

 名古屋市動物愛護センターには、噛みつく、吠えるなどの理由で、また引っ越しなどの飼い主の都合で捨てられたり保護されたりした犬たちが、平成23年度だけで549頭収容されました。大半は飼い主から見放された「飼育拒否」ですが、飼い主の元に帰った犬が204頭、しつけをすることによって里親さんが決まり譲渡されたのが171頭、高齢・病気などで殺処分されたのが174頭でした。その他、「飼育拒否」などで、ドッグデュッカへ直接連れてこられて保護をした子が40〜50頭います。1年間に100頭前後の犬を保護していることになります。

●設立の経緯

 高橋さんは飲食店の経営をして、2号店を出すまでは順調でした。しかし、3号店を出すときに詐欺に遭い、多額の借金を背負い人生に絶望を感じていました。心の寂しさを埋めたいという思いから犬を飼うことになり、その犬を「デュッカ」と名付けます。そして、「もう一度人生をがんばろう」と思わせてくれたデュッカと一緒にいられる仕事をしたいと、「犬の仕事」をすることにしました。その後、トリミング、訓練士の資格を取っていく中で、「犬に癒されてここまで来た」という思いから、保護の問題、そして殺処分されている犬たちに向き合うことになったのです。15年間の犬の保護活動を通じて、名古屋市動物愛護センターとの連携を図ることの重要性に気づき、その受け皿として2010年にドッグデュッカを設立しました。それとは別に、犬と飼い主の幸せを願いながら収益活動をする「わんわん保育園DUCA」も作りました。

かわいい犬たち

とてもかわいいわんちゃんがお出迎えしてくれます

犬のイラスト

●活動の実際

 活動の一番の柱は、保護活動、里親探しです。噛みつく、吠える、引っ越しなどの理由で保護された犬がもう二度と捨てられないように、どの家庭にもらわれたら幸せになるかじっくり検討し、犬と人の橋渡しをしています。
 以前は保健所、名古屋市動物愛護センターに持ち込まれてしまった犬は、里親が見つからないと殺処分されていました。現在は、行政の人たちの努力で、問題のある犬をドッグデュッカのような専門家に預けて訓練した後、新たな家族(里親)にもらわれていくことができる「譲渡ボランティア制度」ができ、殺処分から救えるようになりました。この制度を使って、ドッグデュッカでは昨年28頭を引き取り、すべてを新しい里親に譲り渡すことができました。また名古屋市動物愛護センターに持ち込まれた犬たちは、しつけ相談やトレーニングを経て元の飼い主のところに戻るケースもあります。「困ったらドックデュッカへ」という流れが生まれ、少しでも飼い主と犬たちが幸せな生活を送れるようになることが高橋さんの願いです。
 保護した犬たちは噛み癖、吠え癖などいろいろな癖を持ったまま持ち込まれます。そういった癖、性格を服従トレーニング(おいで、おすわり、伏せ、待て、ついて:リードがたるんだ状態で歩くこと)などを通して改善させ、人間のパートナーとして最高の形にもっていかなくてはなりません。そのトレーニングを毎日コツコツと行うのです。多くの犬たちが一緒に暮らしていますが、ケンカをして怪我をしたとか、死んでしまったことは一度もないということです。それは、犬たちのリーダーである高橋さんが頼りになるからです。
 高橋さんは、アニマルセラピーとして各種施設、学校を訪問する活動もしています。保育園に通っている犬たちを主役に、ファッションショーや触れ合いタイムを演出したりするだけでなく、寸劇も取り入れて、訪問先の人たちに心から笑ってもらえるよう企画しているそうです。たとえば「水戸黄門」の寸劇は、犬の水戸黄門と助さん角さんが登場し、あるタイミングで水戸黄門に対してひれ伏すというものです。そこでは人は犬に癒され、犬は人により生かされるという人と犬の共存が存在していました。
 また、高橋さんはドッグトレーナーの専門学校で講師として学生の指導にもあたっています。ドッグトレーナーの育成、行動学や栄養学、洋服、おやつ、トイレシート等のドッググッズの制作、アニマルセラピー犬の育成といったカリキュラムを教えているそうです。この内容を見ると高橋さんの生き様が投影されているような気がしました。

●終わりにあたって

 取材を終えて帰る時に、黒色のラブラドールレトリバーがシャンプーをしてもらっている光景が目に入りました。「おとなしい子ですね」と言うと、「2ヵ月前に千葉県から来たのですが、当初は暴れん坊で大変でした。愛情を注いで、しつけをすればみんないい子になりますよ」という心温まる話を聞くことができました。どんな犬でもドッグデュッカに来れば、1ヵ月でいい子になるとのことでした。
 しかし、ドッグデュッカの活動には、病院代、エサ代、去勢・避妊手術などの経費が年間300万円、多くの犬たちの生活の場を確保するための場所代として年間360万円がかかっています。これをわんわん保育園の収益、寄付、グッズ販売から捻出しています。物販の売上げ、トリミングの売上げが増えれば保護活動資金が増えるため、皆さまからのできる範囲でのご協力が何よりの支えです。

●取材者からひとこと

今まで助成金を申請しても、一度も助成を受けられなかったというドッグデュッカの活動ですが、犬の命を守るというすばらしい仕事をしていることが認められないということにやるせなさを感じました。「将来的には恵まれない犬たちを保護するシェルター施設がほしい」、そんな夢を語って下さった高橋さん。その取り組みをバックアップするネットワークのようなものがあればいいと感じました。

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