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現実を知ることから始まる国際協力。 世界の子どもたちの夢を育てるために
 − NGO・世界の子どもたちを貧困から守る会 −
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世界には、貧困に苦しんでいる子どもたちが大勢いる。毎日のご飯を食べることができなかったり、働くために学校に行けなかったり、治せるはずの病気が治せず命を落としてしまったりすることも少なくない。貧しい国では大人たちも子どもの面倒を十分に見ることができず、頼る人も知識もない子どもたちは、悲惨な生活を余儀なくされる。そんな世界の現状を学びながら、日本で、”自分たちにできる範囲”の国際協力を行っている「NGO・世界の子どもたちを貧困から守る会(以下「NGO Children」)」は、さまざまな「国際協力」の形があることを私たちに教えてくれる。
「子どもたちの力になりたい」。この思いがすべての始まり
 NGO Childrenの設立は2000年4月。現在も代表を務める廣田さんが、たった一人で立ち上げた。その経緯について、廣田さんはこう振り返る。「国際問題に関心をもったのは高校生の頃。当時、第二次中東戦争(スエズ動乱)が起きて、学校で論文を書くためにいろいろ調べていくうちに、国際問題にのめり込んでいった。宗教戦争、独立戦争など、世界中で紛争や戦争が絶えず、そして貧困だけが残っていく。そんな現状を知れば知るほど、「何とかできないか」という気持ちが強くなっていった」。社会人になってからも廣田さんの国際問題への関心は強まる一方だったが、ボランティア活動に始めて参加したのは、50代になってからだった。1997年、名古屋のある国際関係のNGOの会員となり、その後、世界のさまざまな問題に取り組むにつれて、廣田さんの関心は次第に「子ども」に向けられていった。「知恵もなく、自分だけでは生きられず、頼りになる親も恵んでくれる人もいない貧しい国の子どもたちのために、少しでも何かがしたい」。そんな思いを形にするために、新たな団体の設立を決意した。
 ボランティア情報センター(現なごやボランティア・NGOセンター)のホームページに団体情報を掲載したり、イベントに積極的に参加して活動をPRしたりするうちに、廣田さんの周りには、活動に興味を持ってくれる人たちが集まり、今では、年齢も性別も異なる約30名のメンバーが、会議やメール上で意見を交換しながら活動している。
一つひとつの縁を大切にしたら活動が生まれた
 NGO Childrenが対象とするのは”すべての国”の子どもたち。しかし、ネパールとのつながりがとても大きい。きっかけは一本の電話だった。活動を始めた直後、知人から、ネパールの孤児院「National Care Center」を支援して欲しいという相談を受けた廣田さんは、二つ返事でこれを引き受けた。その孤児院にはお金がない、ということで、まずは孤児院を経済的に支援するためのバザーを始めた。ネパールの物産を集めたりする上で、自然にネパールのことを勉強するようになる。さらに、ネパールと関係の深い周辺国の政治、経済、文化なども勉強したくなる。実際にネパールに行ったことのない廣田さんも、「ごくまれに新聞などでネパールの記事があると、隅々まで読んでしまう」 と、自身の変化を実感している。相手の国のことを知ることで、活動にもより思いが入る。
 そして最近では、イベントでNGO Childrenの存在を知ったという一人のネパール人留学生との出会いがあった。「ネパールには本や図書館が少ない」という彼女の話を聞いた廣田さんたちは、「それならば、本を集めてネパールに送ろう」と新たな事業を企画。絵本から大人向けの一般書まで、日本語の本をネパールに送り、それを日本に興味を持っているネパールの人たちに翻訳してもらおうというのだ。そうすることで、ネパールの人たちにも仕事が生まれる。翻訳者を確保したり、名古屋市内のネパール料理店に本の回収の協力を依頼したりと、準備を進めている。
 一つひとつの偶然や縁を大切にし、その中で、自分たちに何ができるかを考えることで、NGO Childrenのさまざまな活動が生まれてきた。
2005年9月港区築地口商店街でのバザー
国際協力を行う立場として、真実を見極める努力も必要
 NGO Childrenは、第2・第4土曜日の午後に、会議を行っている。イベントや各事業の企画・準備など、話し合いの内容はさまざまだが、メンバー同士の交流も大切な目的だ。もちろん、仕事などで定例会議には出席できないメンバーもいるが、「彼らも団体の力になっている」と廣田さんは言う。
 会議にほぼ毎回参加しているという浦野さんは、NGO Childrenに入ってまだ半年。ボランティア講座の一環でNGO Childrenを訪問したときに、廣田さんから活動について話を聞き、「子ども」に焦点を当てている点に興味を持ったという。「何の責任もない子どもたちを守る責任は大人にある」という浦野さんの思いに、NGO Childrenの活動が応えてくれた。同じく、「”世界の子どもたち”のための活動がしたい」、という思いがきっかけだったという浅井さんは、「廣田さんの”弱者”への思いや、他のボランティアさんたちの心の温かさに惹かれて活動を続けている」と話してくれた。
 議題とは別に、毎回の会議ではいろいろな話題が出る。その多くが、社会問題に関することだ。「NPOやNGOは、真実を見極めないと対応を間違ってしまう。新聞を読み、ニュースを見る。日本と外国との関係、首相や外務大臣の発言には常に注意を払う。そして時にはニュースの裏(真実)を読むことも大事」と廣田さん。まずは現実を知ること。そこから問題意識が生まれ、活動が生まれ、活動を通してまた学ぶ。国際協力を行う立場として、そうした日々の努力が大切だと考えている。
絵画・作文コンクールで子どもたちから学んだこと
 「継続的な支援」と「新しい活動」の両方を、できる範囲で続けているNGO Children。その継続的な事業のひとつが、2005年度と2006年度に実施した、「NGO・世界の子どもたちを貧困から守る会 絵画・作文コンクール」だ。「貧困について、小さなときから一緒に考えよう」という目的で始めたこのコンクールには、予想以上の反響があり、メンバーも喜んでいる。さらに嬉しいことに、その審査員を、2年連続でアグネス・チャンさんが引き受けてくださった。「とても忙しい方なのに、私たちの熱意に応えてくださって感謝している」と、みなさん口をそろえる。
 コンクールの応募者は国籍を問わない。「私の無くしたら生きていけないもの」(絵画の部)、「この国に生きる私が、世界のためにできること」(作文の部)など、考えさせられるテーマだったにも関わらず、新聞などで公募したところ、第1回目、第2回目ともに、300点前後の応募があった。中には、アメリカの日本人学校の子どもたちから送られてきた作文もあった。「どういうきっかけで誰が見てくれるかわからない」と、みんなこの反響の多さには驚いている。集まった作品はメンバーが審査し、絵画と作文10点ずつをアグネス・チャンさんに送って最終審査を依頼。その後、受賞者を招いての表彰式や、展示会も行った。
 子どもたちの絵画や作文を見て、「自分が子どものころ、こんなに真剣に物事を考えたことがあっただろうか」と考えさせられたという廣田さん。子どもたちの作品を発表する場を増やし、じっくり見たり読んだりできるよう展示方法を工夫し、多くの人に実際に作品を見てもらいたいと思うほど、子どもたちの作品からは学ぶことが多いそうだ。「子どものうちはできなくても、大人になったらやりたい!こういう子どもたちの気持ちを大きく育てていくこと」。それが大人の役割だと考えている。
絵画・作文コンクールの審査風景。
毎回子どもたちの発想に驚かされる
 「小さな活動だが、毎回みんなのアイデアで、ユニークで心が温まるバザーや絵画・作文コンクールが出来ている。バザーに立ち寄ってくれるお客さんや、コンクールに参加してくれる子どもたちが、世界の貧困に苦しむ子どもたちに目を向けるきっかけになることを願っている」と浅井さんも言うように、いつか世界から貧困がなくなるように、貧困に苦しむ子どもたちのことを思って、NGO Childrenのメンバーは、今後も地道な活動を続けていく。
 ”自分たちができる範囲で”とはいえ、まだまだやりたいこと、やれることはたくさんある。
2006年10月、栄のオアシス21で開かれた
「2006年ワールドコラボフェスタ」にブース出展。
イベントでのPRも大切な活動(右から2番目が廣田さん)
第1回目の絵画・作文コンクールの表彰式にて、受賞者と
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名古屋市中村区那古野1−44−17嶋田ビル3階
(名古屋国際センター1分)
TEL:090−4184−5389
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