特
  集
第二の人生を地域のために
 − イキイキライフの会 −
ホームへ/
バックナンバー目次へ

戦後まもなく生まれた7百万人の団塊世代が2007年から定年退職を迎えます。
今まで仕事一筋で突っ走ってきたお父さんたち。これから生活の舞台となる地域社会との結びつきが薄い人も多いのではないでしょうか。まだまだ元気なシニア世代、社会の役に立ちたいと願う人も多いはず。
そこで今回は、第二の人生の生きがいとしてボランティアの道を歩んでいる先輩たちが活動するグループを紹介します。定年後もいきいきとした人生を、との願いをこめて、その名も「イキイキライフの会」。岩倉市を拠点に地域に根ざした取り組みを展開しています。

うどん作りで広がる笑顔
五月晴れのとある土曜日の午後、岩倉市の公共施設・希望の家で、西沼子ども会のデイキャンプが開催された。集まったのは、小学校1年生から6年生までの子どもたち50人と役員のお母さんたち。夜のキャンプファイヤーの前に、腹ごしらえも兼ねた手打ちうどん作りが午後2時からのイベントだ。そしてその指導にあたるのがイキイキライフの会のメンバーだ。
会のロゴ入りのキャップとエプロンに身を包んだメンバー9人が、カラフルなバンダナにエプロン姿で座る子どもたちの前に並ぶ。「私たちの言うことをよく聞いて作れば、必ずおいしいうどんができます。がんばりましょう!」とうどん作りのリーダー柳井清さん(68才)があいさつする。
『手打ち麺作り』は、日清製粉で働いていた柳井さんが9年前にメンバーになって始めた活動だ。当初は岩倉市の老人会、婦人会、デイサービスセンターなどで行っていたが、今では名古屋市、安城市、江南市などの施設や学校に出張し、自慢の味を伝授している。
揃いのエプロンで自己紹介するメンバーたち
 「うどん作り、人生初だよ!」「僕も僕も!」。期待に目を輝かせた子どもたちは、8班のグループに分かれて、2人1組で作業をスタート。各班には1人ずつ会のメンバーが指導に入る。うどんの材料は、小麦粉、食塩、水の3つだけ。それぞれのテーブルで作り方を説明しながら手を動かすメンバーを囲んで、子どもたちは真剣なまなざしで見つめる。
まず小麦粉をボールに入れ、食塩水を少しずつ注ぎ、指先でまぜあわせながら、徐々に丸い形にまとめていく。まとまったらビニール袋に入れ、床に置いて、上から足で踏んでいく。「うわー、もちもちして気持ちいい!」と元気よく飛び跳ねる低学年の子に、「食べるものだから大事に踏むんだよ」とメンバーが声をかける。楽しい足踏みが終わると、再び生地を丸くまとめて30分寝かせる。
次に寝かせた生地を麺棒で伸ばす作業だが、これがなかなか力と根気のいる仕事だ。子どもの後ろから麺棒に手を添えて教えるメンバー。コツをつかんだ高学年が低学年の子の助っ人に入る。
うどん作りのリーダー柳井清さん。
子どもたちはコツをつかもうと作業にじっと見入る。

生地と格闘しつつようやく3mm位の薄さに伸ばしたら、四角く折りたたんで、包丁で端から同じ幅に切っていく。初めて包丁にチャレンジする子もいて、麺の太さはまちまち。それもまた手打ちならではだ。
自分の麺ができあがると隣の調理室に持っていき、大きな鍋で順番に茹で上げてもらう。水洗いをして冷やした麺をお椀の中へ。ツユを注ぎ、ネギ、ワカメ、カニカマ、天かすをトッピングしたら、手打ちコロうどんの出来上がりだ。
「コシがすごいね」「いつも食べてるうどんと違うよ。こっちのがおいしい!」と子どもたちも大満足の様子。
「子どもからお年寄り、障がいを持った人誰でも気軽に体験できるのがうどん作りのいいところ。そして作ったうどんをおいしいおいしいって言いながらみんなで一緒に食べる。自然に笑顔が生まれますよ」と柳井さんも満面の笑顔だ。

自分ができることで喜ばれる
会のメンバーは、7割が男性だが、この日調理室でネギを刻んだりツユの準備をしたりと裏方で支えていたのは、柳井重子さん(68歳)と伊藤千代子さん(66歳)の女性二人。柳井重子さんはうどん作りのリーダー柳井清さんの奥さん。「何か岩倉の役に立ちたい」と、定年を迎える前に市の社会福祉協議会にボランティア登録をしていたら、清さんとともに声がかかった。  「調理関係でボランティアをしたかったから、自分の好きなことで皆さんがおいしい、楽しいと言ってくれてうれしい。今は年に70〜80回はどこかでうどんを作ってます。声がかかればどこへでも行きますよ。忙しいけどしんどいとは思わない。町を歩いていて、『あっ、うどんのおばちゃんだ!』と言ってもらえるのがうれしいですね」と重子さん。  伊藤千代子さんもご主人と一緒に会のメンバーになった。「夫婦で一緒にボランティアも楽しいですよ。みなさんが喜んでくれることが私の喜びですね」。  会は7年前から岩倉市の五条川の桜祭りに手打ちうどんを出店している。今年も3日間で千人近い人たちに食べてもらい、お祭りを盛り上げた。「“手打ちめんのまち・岩倉”というキャッチフレーズが根づくようにもっとアピールしていきたい」と重子さんは意欲的だ。昨年からはボランティア活動センターで地域の人たちと一緒に「手打ち麺研究会」を月1回開催、裾野を広げている。  「今日は勉強できました」と言うのは今年入会した佐藤英夫さん(65歳)。退職後は地元でつながりをもって暮らしていきたいと、社会福祉協議会を訪れて、会を紹介された。「みんな元気でいい先輩ばかり。無理してやっている人がいない。やれる人がやれるときにやれることを。それを楽しんで実践しているところがいいですね」。
手際よく具の準備に腕をふるう柳井重子さんと伊藤千代子さん

長年培った経験を生かす
会のモットーのひとつは「チョボラ」。参加したい時に手を揚げて参加して、手を揚げた以上は責任を持って約束を守るというもの。会には4つの基本活動がある。『手打ち麺作り』『配食サービス』『移送サービス』『車椅子磨き』だ。分会をつくり組織化し、毎月の例会でそれぞれの活動の参加者を募っている。  イキイキライフの会は平成8年に社会福祉協議会のボランティア講座で出会ったメンバー7人で、講座終了後に設立した。立ち上げのメンバーで現会長の中村友之さん(71歳)は、「年を重ねていけば体の不調もいろいろあるけど、ボランティアしてると病気も吹っ飛びます。会のモットー「ピンピンコロリ」をめざしたい」と張り切る。85歳位まで元気でピンピンとして活躍して、3日ぐらいの入院でコロリと天国へ、が目標だ。  メーカーの営業マンとして海外を飛び回っていた柴田薫さん(70歳)は、中国でよく食べていた麺に比べて、コシのあるこの手打ち麺の美味しさにはまった一人。「いつもは『車椅子磨き』の活動で汗を流しています」と話す。一期一会という老人ホームで車椅子を磨く作業には、毎月1回10名位が参加。約10台の車椅子を新品同様にして帰る。ホームのお年寄りとのつきあいも親密だ。「『わし、もうだめだわ』とぼやくお年寄りに、『あんたまだ若いのに何言ってんの!』と渇を入れる83歳の会員もいるからね」と笑う。

平成10年に始めた『移送サービス』は、当初は白タク呼ばわりされながら、75歳以上の一人暮らしのお年寄りを近隣病院へ送り迎えをしていた。平成13年からは岩倉市の福祉事業で移動支援サービスの運転ボランティアを開始。そして平成18年2月からは、中部運輸局から自家用自動車による福祉有償運送の許可がおり、法律に遵守した移送サービスを行っている。現在、利用登録者は100名近くになり、毎月増えている。  そのほかに会では、在職中に培った技術や趣味を生かして、会員の親睦や交流を図る活動にも取り組んでいる。パソコンの個人レッスン、住宅相談、ビデオ・カメラの出張・編集などを請け負っている。またハイキングやバス旅行を開催したり、児童館で子どもたちに、紙芝居や折り紙、コマ廻しなど昔懐かしい遊びを伝えるなど、幅広い世代の地域住民が触れ合う活動を繰り広げている。  「リタイアした人たちにはぜひ地域で新しい活躍の場を見つけてほしい。興味の対象は他にもいろいろあるだろうし、選択肢もあるけれど、ボランティア活動も視野に入れてほしい」と会長の中村さんはエールを送る。  地域に増えてきたさまざまなNPOは、まだまだ活力あるシニアたちの豊富な経験を発揮できる受け皿となるし、その力はNPOにとっても新しい可能性を広げる一翼として期待される。
車椅子をピカピカに磨き上げると、心も磨かれて晴れやかな気持ちに。
移送サービスの会員は毎月増えている。これからますますニーズは高まりそうだ。
Information

★イキイキライフの会では、メンバーを募集しています。
  「チョボラ」から始めてみませんか。
●連絡先
イキイキライフの会 会長 中村友之
TEL&FAX 0587-66-8648〒464-0821
ホームへ/
バックナンバー目次へ