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大学生、小・中・高校へ出張授業。子どもとともに考える学びの場をめざして

−ToBe中日本−
総合学習の授業、学校週5日制などの導入によって、教育の現場はこれまでにない学びの姿を模索しています。名古屋市内では、休日になった土曜日に、多様な市民講師を巻き込んで、授業とは一味違う教養を学ぶ「土曜講座」に取り組んでいる学校もあります。
そんな中、市民講師として、学びの場へ若い風を吹き込んでいる大学生たちがいます。
教育=共育を掲げて、学び合い
 愛知学院大学、愛知淑徳大学、名古屋大学、名古屋女子大学など主に愛知県内の大学生10数名のメンバーで活動しているToBe中日本。県内の小・中・高校で総合学習の時間などに授業アシスタントや講師として活躍している。2001年に設立準備委員会を立ち上げたときの3人のメンバーはすでに卒業、去年の春、初めて市民講師として生徒の前に立ったのは、その後輩たちだ。
 「僕らはこれといった専門性があるわけじゃない。僕らの役割は、子どもたちの声を引き出していく、自ら考えるための道筋をつくっていくことです」と名古屋大学4年生で代表の一人、加納祐二さん。「大学生は、市民の中でも子どもたちに一番近い立場。身近なお兄さん、お姉さんとして一緒に学び合うという感覚です」と、もう一人の代表で愛知学院大学3年生の岡田紘幸さん。教育=共育を旗印に「学び」を共有する場をつくっている。
 出張授業の依頼は、学校から直接ToBe中日本へくるのではなく、市民と学校とを結ぶコーディネート事業に携わる、NPO愛知市民教育ネット(ASK―NET)からの紹介にこたえるという形だ。子どもたちにとって学校外の経験豊かな社会人、個性的な市民の言葉を聞くことは、多くの刺激となり、人生の貴重な出会いの機会となる。

写真1写真2


自分の頭で考え、声を出して発信する力を育む
 「生徒がやりたいと思うことを体験できる場をつくりたい」。岡田さんは今、安城学園高校で始まる連続講座のプランの作成に取り組んでいるまっ最中だ。授業の内容は、学校から指定される場合もあるが、一から任されることもある。授業のコンセプトからプラン作りまで自分たちで練り上げていく。今度の連続講座は『なりたい自分をさがそう』がテーマ。漠然と進路を考えている高校生に、未来を見つめ、具体的に将来設計を描いてもらうのがねらいだ。そのために、大学生、会社員、起業家それぞれの卒業生をゲストに招いて実体験を語ってもらおうと考えている。
 また、他の高校の講座では、医療福祉系の仕事を紹介するため、介護福祉士、保育士、医療秘書として働く人たちを招く予定だ。「講座を通じて、いろいろな専門家、さまざまな世代の人と出会えるのがこの活動の楽しみのひとつ」と岡田さん。
 福祉の分野に興味があるという加納さんは、去年、愛知中学で8回の連続講座を受け持った。福祉とまちづくりをテーマに、いくつかのまちの風景を撮影した写真から、車椅子生活者、視聴覚障害者にとって何が障害になり、どう改善したらいいかを考えてもらった。
 ToBe中日本では、一方的な講義形式の授業ではなく、双方向の授業を心がけている。「『語ることは起爆力、書くことは内省力』という言葉がありますが、聞くだけではなく、話すこと書くことで、自ら考え、発信する力がつく。授業はグループに分かれて自由に意見交換できるワークショップ形式が主流です」と加納さん。
 大学生が一人ずつグループに入って進行役を務めるが、最初は反応が鈍く建前で話している生徒たちが、課題を共有していくプロセスの中で次第に打ち解け、本音を語り始める。「生徒から、それは違うんじゃないのと疑問を投げかけてくるようになる。一緒にひとつのことに向き合っていると実感できる瞬間がうれしいですね」。

代表の岡田紘幸さん 代表の加納祐二さん
代表の岡田紘幸さん 代表の加納祐二さん

大学生だからできること
 学生生活の過ごし方はさまざまだ。その半分以上を過ごした岡田さん、加納さんともに、勉強と活動の力配分は半々ぐらいだとか。「周りの大学生をみると、社会貢献をしたいという意識はかなりある。自分自身、学校にとらわれず、社会の中で何かやろうと思ったとき、ボランティアという形になった」と言う。加納さんは、名古屋大学のSong Of Earthという環境サークルの恒例イベントで、卒業生のリユース家具のコーディネートに奔走、その達成感は大きな自信につながった。そんな学生生活を満足そうに振り返る。「刺激に満ちていた。時間や労力がかかること、ムチャなことをやるのが成長につながると思う」。  
 岡田さんも勉強と活動がバランスよく補い合っている。「ボランティアという意識はなくて、自分のやりたいことを楽しんでやっている。活動の実践が、大学での勉強に生きていると感じることも多い」。
 ToBe中日本での活動は、大学生という限られた立場と自由な時間の中でできることだ。自分よりすぐ下の世代がぶつかる悩みや問題を通過してきたばかりだからこそ、感じられること、伝えられることがある。身近な未来の夢をともに育むことができる。
 現在、活動する仲間を募集中だ。「幅広い分野の共育がしたいので、国際問題でも音楽でも何でも、興味のあることや得意なことがある人、大歓迎。子どもが好きな人、教育実習の練習をしたい人もどうぞ!」。ToBe中日本との出会いが、大学生活を刺激に満ちたものにしてくれるかもしれない。


インフォメーション

●連絡先
ToBe(トゥービー)中日本  
URL: http://www.geocities.co.jp/NeverLand/2993/
担当: 岡田 携 帯: 090-9029-0538  
      E-mail: hiro-grazie@rio.odn.ne.jp

第15回愛知サマーセミナー開催
7月19(土)20(日)21(祝)22(火)、中京大学、中京大学附属中京高校、八事興正寺などを会場に、市民による900近い講座が開催され、ToBe中日本も講座を受け持ちます。教育のお祭りに、気軽にご参加ください。
詳しい情報はホームページ
http://www.ask-net.jp/summer/ )にアクセス!
2002年サマーセミナーの様子
2002年7月のサマーセミナーでは、楽しく身近な環境を見つめなおす講座を開きました。


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