名古屋市天白区の中央にある、26.5haの広大な天白公園の一角。木々が生い茂るこんもりとした山とそのふもとに、全国でもめずらしい地域住民が運営する遊び場があります。木に結ばれたロープのぶらんこ、廃材で作った滑り台、ごろんと置かれた竹や丸太棒・・・。昔、秘密基地を作った裏山のような、友だちと缶蹴りした空き地のような、幼い頃の記憶にある風景のよう。この遊び場で、子どもたちは火を焚いたり、ノコギリで木を切ったり、泥んこになって水遊びをしたり。自由な場と時間の中で、目を輝かせて遊んでいます。

見出し:好奇心と欲求が実現できる遊び場を目指して
てんぱくプレーパークが開設されたのは、今から4年前。でもそこにたどり着くまでの道のりは、20年近くさかのぼります。 1982年、名古屋市は天白公園整備計画を発表。地形を変え、大型遊具を配置する従来の公園づくりに異を唱えた地域の人たちが、「この自然をできるだけそのまま子どもの遊び場として残したい」と自主組織を結成。自然観察会、間伐材を使った遊具づくり、野外祭などを開催、市へ提言するなど公園づくりに関わり、その活動は当時注目を集めました。その中で、「公園の雑木林を舞台にプレーパークをつくりたい」という土壌が育まれていきました。1998年、プレーパークを運営、支援するてんぱくプレーパークの会が発足、1ヵ月後にてんぱくプレーパークはオープンしました。 そもそも『プレーパーク』って普通の遊び場とどう違うのでしょう?「子どもが自分の責任で自由に遊ぶ。常駐のプレーリーダーがいる。子どもの生活圏にある日常的継続的な遊び場・・・そんなところです」と言うのは、てんぱくプレーパークの会代表の竹村万知子さん。子写真:穴の中にすっぽりと入る子と泥の中を足で探る子達どもたちの好奇心や欲求を大切にして、やりたいことを実現できる場所をめざしています。「ここでは禁止事項はないんです。壊すことも遊び。用意した遊具は何もないから、自分たちで作っては壊してまた作る。だから日に日に形が変わっていくんですよ」。 火を焚けるというのもこの遊び場ならではのこと。落ちているどんぐりを燃やしたり、くぎを焼いてのばしてナイフにしてみたり。「何でもいいからただ燃やして、その様子をじいっと見ていることも。そんな時間を過ごせるところなんです」。
 
写真左:ただ穴をほってたら、こんなに大きな穴に。じゃあ誰かを埋めちゃおう!
写真右:泥の中にかくされた宝を探して
  見出し:プレーパーク・・・発祥の地はデンマーク
1943年、大人が準備した遊び場ではなく、ガラクタの転がっている空き地や廃材置き場で、子供たちが生き生きと遊ぶ姿が発見され、世界で最初の冒険遊びがつくられた。日本では1979年に国際児童年の記念事業として世田谷区に羽根木プレーパークが誕生した。
 
写真:テントを作ったのかな?
 
写真:どんぐりを焼いている様子
 
写真:ちっちゃい子達が裸になって遊んでます。
見出し:プレーリーダーと地域の人に支えられて

プレーリーダーと地域の人に支えられて プレーパークに欠かせないのが、プレーリーダーの存在です。「プレーリーダーはただの大人でなく、遊ぶきっかけを作る人です」と言うのはその一人、福田善行さん。子どもの遊びの起爆剤になったり、遊び心を誘い出したり。そしてケガやトラブルに対処したりといろいろな役割を持っています。もう一人、野中陽子さんは、大学卒業後、ここで働きたいと東京からやってきました。「毎日子どもの言ったこと、したことが心に残ります。この間も竹トンボを作って飛ばしていたんですね。そしたら私のが泥の中に落ちてしまった。子どもが拾って、自分の服で泥を拭いて、渡してくれた。なんかすごいなあって。子どもが自然でいるから、私も取り繕ったりせず正直に向かい合っていたいですね」。 ここにはボランティアやふらりとやってくる若い人たちが7、8人います。「子どもの環境の中に親以外の大人がいるのはいいと思っていたんです。そしたら自然に集まってきてくれて。子どもと大人お互いが必要としている場になってきました」と竹村さん。散歩で通りかかる地域の人とあいさつを交わしたり、声をかけてくれる人も増えてきて、地域と顔の見える関係もできてきました。
 
写真:落ち葉のプールで遊ぶ夏に水遊びしたプールが、秋の終わりには落ち葉のプールに。

 
写真:”遊ぼうパン”の様子
”遊ぼうパン”というイベントの一コマ。地域の人もいっぱい集まってくる。
長い棒の先にパン生地を巻いて火にかざして
写真:「野草を食べる会」の様子
見出し:今も昔も本質は変わらない。だから必要な場所 公園で採ったタンポポやわらび、せりなどを天ぷらにして食べる「野草を食べる会」の一コマ。最近では野草も少なくなって、「雑草を食べる会」に!?
豊かなモノに囲まれている最近の子どもたち。何もない自然の中で遊べるのか気になるところです。「子どもの本質って、今も昔も変らないんです。何もないところから遊びを創り出すんですよ。実はこれはプレーパークをつくって自信を持てたことのひとつです」。やりたいことを自由にやる遊びの大切さ、プレーパークという場所が子どもに必要だということを、竹村さんはこの4年間実感してきました。「最近は大人の価値観でいろんなことを管理しすぎて、子どもが失敗する場所が少ない。だから自信を持つことができないんですね。失敗と成功を繰り返すことで自信をつけていくんだと思います」。プレーパークを通して、遊びを通して、たくましく生きる力を身につけてほしいと願っています。 てんぱくプレーパークには、自由な場と時間があります。目を輝かせたわんぱくな子どもたちがいます。そして与えられないからこそ創り出す、本当の遊びがあります。
見出し:Information

●ボランティア募集
子どもが遊ぶのを見守れる人、ホームページの更新をしてくれる人、山の手入れをしてくれる人、などなど。とにかく一度遊びに来てください!
●「てんぱくプレーパークの会」会員募集
会の運営資金(主としてプレーリーダーの人件費)は会員の会費やカンパなどで成り立っています。会員になって活動を支えてくれる人には、月1回イベント情報等掲載のプレーパーク通信をお送りします。
●てんぱくプレーパーク
名古屋市天白区島田黒石天白公園内
月・火休み
(休日・振替休日は開いています)
TEL : 090ー2348ー8521

写真:福田さん 写真:野中さん
プレーリーダーの福田さん(左)と野中さん(右)