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今月の特集

「和太鼓」が町を元気にする


2002年4月


和太鼓――――今は昔、それは戦う人々の士気を高めるために打ち鳴らされた楽器だった。
21世紀の今、その和太鼓を、地域、特に古い町を元気にする道具として復活させようとする人々がいる。
かつて東海道の宿場町として栄えた豊川市御油にあるNPO法人「やらまい会」が、それだ。
地元の名物酒屋店主が酒蔵を改造して建てた茶店(ちゃみせ)「弥次喜多茶屋」を拠点に、ユニークな活動を繰り広げる「やらまい会」。その取組みを取材した。


和太鼓は、心の鼓動

 豊川市と音羽町の境目にある国の天然記念物「御油の松並木」を御油町側から入ってすぐに、黒塗りの趣のある木造家屋が見えてくる。 ひときわ目を引くここ「弥次喜多茶屋」は、豊川市と宝飯郡に3つの酒屋を経営する伊藤武彦さんが、4年前、自ら引退後の居場所として作った茶店。 伊藤さんの温かい人柄も手伝って、ここには地域のいろんな人が自然に集い、お茶会、陶芸の会、フランス料理の試食会、インターネットの勉強会等さまざまな企画が連日のように開かれるようになった。 やがてそこに集う人々の意識は、豊川市を含む市町村合併の問題、松並木の保存、CATVの招致、IT革命など、地域に山積する課題へと、テーマの比重が傾いていった。 そして去年、NPO法人「やらまい会」の設立に至ったのだった。
国の天然記念物 御油ノ松並木

 地域の活性化を旗印に活動を始めた「やらまい会」が、その独自性を鮮明にするために、目を付けたのが「和太鼓」。「弥次喜多茶屋」の店主兼「やらまい会」の理事長伊藤さんは、その理由について語る。

 「古い町には、だいたいどこでも和太鼓の会がありますが、演奏する機会はめったにないんです。だからそうした機会を提供すれば古い町は活性化につながるし、私たちの取り組んできた問題も解決の方向へと前進できるのでは、と考えたわけです。 イベントを起点に、地域間の親睦を深めて市町村合併の課題に取り組んだり、イベントの模様を映像化してインターネットで流したり、CATVで放映する企画も立てられる。それに…」伊藤さんは、続ける。 「和太鼓は、『心の鼓動』なのだと私は思っています。あの力強い音色には、人々の心を奮い立たせる何かがあるんです。かつては、いくさ人が戦いの前に聞いたくらいですからね。21世紀の「やらまい会」では、まったく違う意味の音色として響かせたいんです。」

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